updated:2016.01.06

【触楽入門こぼれ話】第3回 「テクタイルツールキットの発明・前夜」

テクタイルをご存知の方は、お馴染みの、テクタイルツールキット。この装置は触感を記録し、伝達、共有することができる技術です。触感のバーチャルリアリティ技術と呼んでもよいかもしれません。過去に工学者が開発してきた触覚ディスプレイとの違いは、「前提知識がなくても誰でも使えること」。これが設計指針であり、そして設計要件でもありました。

テクタイルツールキットが生まれて初めて、その形を見せ始めたのは、2011年3月31日のことでした。この日は、山口情報芸術センター(YCAM)のInterLabの所属であった三原と大脇さんを横浜・日吉に迎え、初めてのYCAM InterLab 2.0 “TECHTILE”のキックオフ・ミーティング当日だったと記憶しています。
この日は初めての全体MTGとあって、全員がやや緊張の面持ちのまま長いアジェンダを淡々と進めていました。ところが、南澤がその時に見せた装置が出るやいなや、そこにいた全員が興奮してしまい、その後の議題をすっかり忘れてしまう顛末でした。

触楽入門 5章「実在感を作り出す」の中より当時の様子を引用します。
『何の気なしに、研究室に転がっていたビー玉を拾い、マイクロフォンの付いた紙コップに入れてみました。すると、振動子の付いた紙コップを持っていた共同執筆者の三原が歓声を上げたのです。』

研究を長くしていると、こういった夢の様な瞬間が訪れるのだなと、研究者冥利に尽きた一夜でした。
その時の様子は、ぜひ本編でお読みください!
(つづく)

[2016/1/15発売]【触楽入門】(朝日出版社)
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